この日は数年ぶりに親子水入らずで
那須の温泉旅館へ泊まりに来ていた・・
義母、奈々子が勤める保育園で園長へと
昇進し何かと慌しかったせいもあったが
高校生となった今もおねしょ癖が直らない
里奈は外泊に関してはことさら拒絶反応が
あったに違いない。旅行前夜も・・・
『明日は早いんだから、今夜はあんまり
夜更かし、しちゃ駄目ですよぉ〜適当に
お勉強を切り上げて寝なさいな・・・
それにしても、何年ぶりかしらねぇ?
温泉なんて・・あなたのママになってから
確か。。2回目?お泊りするのは?・・
(ほんと・・外泊恐怖なんだからぁ・・
あら?そんなのは、無かったかしら?)
これからは、ちょこちょこ行こうね!』
う、うん・・小学校以来かな・・
(ママったら・・あん時だって・・
布団上げのお兄さんの目の前で、私の
寝巻きの裾を平気で捲り上げた癖にっ!)
<奈々子は楽しげに里奈の部屋から
出て行こうとした・・その時だった>
『判ってると思うけど・・夜中に起きる
目覚ましを忘れちゃ絶対に駄目だからね』
<それは、宿泊先の旅館で万が一でも
布団を濡らしたらお仕置きが待ってると
言わんばかりの宣告に里奈へは聞えた>
『はぁ〜ああぁ!やっぱり露天風呂は
最高だわぁ〜、命の洗濯とはこの事ね〜
あなたも、もっと温泉に浸かってきなさい
せっかく温泉にきたのに、家にいるのと
同じでほんとカラスの行水なんだからぁ〜
体を芯から暖めておかないとぉ〜・・』
『別に私は、そんなつもりで言った訳
ではないけど・・判ってるんだったら
それはそれで良いわっ。さぁ、ご飯よっ』
二人は蛍を見ながら、ゆっくり部屋食を
嗜むと、まだ夜の8時過ぎだと言うのに
何度も温泉に浸かったせいか?全身が
とろけてゆくような、そんな心地良い
疲れから、早めに床を用意してもらった。
『あぁ、お兄さん?このシートを娘の
敷き布団とシーツの間へ入れて頂戴なっ』
あぁ!ママぁ!いつのまに、そんなものを
バックへ詰め込んだのよぅ〜!!もうっ!
お、お兄さん・・冗談ですから・・ははっ
<泊まり先の布団を濡らしてはいけないと
奈々子の気配りも、女子高生の里奈には
とんでもなく、恥ずかしい代物だったのだ>
「えっと・・良いんですか?それって・・
おねしょシートですよね?結構、皆さん
ご使用してますよ、忘れたご家族用にうちで
ご用意してるくらいですから・・はい」
『あ・・お兄さん。ごめんなさいね・・
この娘ったらぁ!何を恥ずかしがってるのよ
昔から、旅の恥は掻き捨てていくもんでしょ
あれ・・捨てるんだっけ?とにかく・・』
もう、良いのっ!お兄さん・・後は私が
敷いておきますから・・ご苦労様ですぅ〜
(ふにぁ〜・・あぁ・・疲れたぁ〜)
私、も、一回お風呂で暖まってくるからね!
ママは先に寝てて良いからっ!おやすみっ!
里奈はなんとか、寝ずに過ごそうと露天で
ひとり、ぼんやり☆を見上げていたが・・
その最後のひと風呂が逆に深い睡魔に襲われ
せっかく持ってきた、夜中のおしっこ用の
目覚まし時計をセットする事をすっかり
忘れてしまい、そのまま朝を迎えてしまった